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絶体絶命の緊迫感『ダンケルク』を鑑賞しました《感想・評価・レビュー》

やはり説明はいらないことを再認識

 映画に限らず、小説や漫画などのあらゆるエンタメ装置において、説明過多になり過ぎているものについては、途中で「親切だなぁ」なんて気持ちになってしまうし、悪く言えば辟易してしまう。余計な説明は一切省いて、とにかく世界観さえ構築してしまえば、物語への没入感は生まれるはずだ。漫画で言えば、弐瓶勉の『BLAME!』とか奥浩哉の『GANTZ』なんかは、冒頭、説明が少なくて好みなのだけど、戦略的に説明がないストーリーを描くのは、作家にとって、それはそれで勇気が入りそうだなとも思う。

 今回、クリストファー・ノーラン監督『ダンケルク』を観て、久々に説明のないクリーンな描写だけの世界を体感出来た。とにかくクールでカッコ良い映画だった。これが実話を元にして描かれたものだと知って、かくも戦争は恐ろしいものだと月並みな感想を抱かざるを得ない。ここまで壮絶な撤退戦を描いた作品は珍しいんじゃないだろうか、何処に逃げても絶望感があるのは撤退戦ならではの醍醐味であるのかも知れないけど、安易なことも言えない。

あらすじ

 第二次世界大戦下、ドイツ軍の侵攻によりイギリス軍・フランス軍はダンケルクに追い詰められた。この事態を受け、イギリスの首相であるウィンストン・チャーチルはイギリス海外派遣軍およびフランス軍、約35万人を救出するためにダイナモ作戦を発動した。


DUNKIRK - OFFICIAL MAIN TRAILER [HD]

逃げても地獄、逃げなくても地獄

 以下、ネタバレがございますのでご注意ください。ネタバレ云々言う映画でもないとは思いますが……。

 本作は群像劇スタイルに近く、3つの時間軸が交差しながら進行していきます。ダンケルクから脱出する兵士たちの話が1つ、ダンケルクに兵士たちを救いに行く親子の話が1つ、そしてダンケルクに向かう空軍パイロットの話が1つ。場面の切り替わりの際に「1週間」「1日」「1時間」と表示されるのですが、これが巧いですね。それぞれの立ち位置で経過する時間が示されていたわけです。ダンケルクの兵士たちは1週間の戦いが描かれ、彼らを救いに行く親子の話は1日、空軍パイロットは1時間の話。それぞれが体感する時間を上手く繋ぎ合わせて、史上最も大規模な撤退作戦を効果的に演出しています。

 映画の冒頭、追い込まれたイギリス兵士の逃走劇が開幕しますが、もう敵が何処から撃って来ているのか分からない、敢えて(だと思いますが)姿を見せないドイツ兵が、命を奪う死神のように感じられる。これも抜群の演出で、敵が見えないからこそ、いつでも間近に死が迫っているような印象を受けます。ドイツ軍の爆撃などで周囲の人間が次々と死んでいく。敵襲がある度に、弾丸が半分入ったロシアンルーレットをするようなもので、生存出来るのか出来ないのかは運次第なんじゃないかと思いました。やはり戦場で生き残るのには運も必要だな……。

空軍がカッコ良い

 戦闘機スピットファイアを駆るのはイギリス空軍の兵士、コリンズ(ジャック・ロウデン)とファリア(トム・ハーディ)、この二人がとてもクールでカッコ良い。コリンズはイケメン過ぎですね、女性にもモテそうですし、ウェットの効いたジョークも素晴らしいです。なにせ、溺死寸前で九死に一生を得た時に、取り乱しもせず「アフタヌーン」って言いますからね。これはモテる、間違いない。

 トム・ハーディは好きな俳優なのですが、今作でも良かったですね。ダンケルクの兵士たちを救うためにドイツ軍の戦闘機を次々に撃墜します。彼が乗っているスピットファイアは計器が故障してしまい、残燃料が分からなくなってしまうのですが、それでもギリギリまで戦い続けます……って、ギリギリどころか燃料無くなっても飛び続けてましたからね、これを漢気と言わずになんと言う。エンジンが止まったスピットファイアが飛ぶ様は、なんだか美しい光景でした。空と海のコントラストを背景に、スピットファイアが音も無く旋回する。しかも、その状態のまま更に戦闘機を撃墜してますからね。これはモテる。間違いない。

陸軍も良かった

 本作の絶望感を体現するのは陸軍の方々だったのですが、まあ散々な目に遭います。逃げても逃げても逃げられないし、船は爆発して沈むし、救われたと思って船に乗り込んですぐに沈没するなんて、どんな無理ゲーかと。私はセプテントリオン(SFC)を思い出してしまいました。射殺されるか、溺死するかの二択。あ、焼死もあったな。海で焼死とか、かなり高難度な人生です。事前知識がなかったものですので、重油が海に漏れ出して火が点くと、あんな風に海の表面が炎上するんですね。

 そんな右も左も上も下も死に直結するような現場から30万人も救われたのは、確かに奇跡の作戦と言われる所以だなと感じます。

 そういえば陸軍にもイケメンがいたのですが、アレックス役を演じていたハリー・スタイルズ、彼はワン・ダイレクションの人じゃないですか! 世界有数のモテるグループですね。うーん、案外とイケメンキャスティングがされていた映画なのかも知れない。

とにもかくにも乾燥した画が良かった

 クリストファー・ノーラン監督の作品って、何だか無機質感があるというか、乾燥した感じがあるんですよね。その印象が本作で更に深まりました。生も死も乾燥してて、そこいらに当たり前に存在している。特に戦場ではその濃度が濃くなりますが、だからこそ余計に生きることへの執着を魅せることが出来るんだろうなと。

 個人的には非常に好みの映画でした。ただ、観る人によっては<ただの撤退戦>としか映らないので、とても退屈してしまうかも知れません。撤退も凄く大変なのだと、そこが勉強になりました。それから、効果的なBGMの使い方もね。映画の匠クリストファー・ノーラン監督はやはり半端じゃない。

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