没個性テーマパーク:EXTRA

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kanataは遠く彼方へ

kanata

 彼らが何処に行ってしまったのか、もう誰にも分からないが、時折に聴きたくなるアルバムがある。その度に、彼らの音楽性と再会をして「あのプロジェクトの続きはどうなったのか?」と不意に心を過るのだけど、もう帰って来る可能性も薄いのだろうと気が付くと、少し悲しくなる。

 kanataは2006年に『gray room 1-1:What is going on in the next room?』と言うアルバムをリリース、私が知ったのは2010年だった。とあるサイトで彼らの『逆ピノキオ』というタイトルの曲を耳にして、何ともシニカルな曲を作り出すものだと興味を持った。アルバムを購入して通して聴くと、シニカルどころではなく、過度な哲学性をも帯びた、極端に難解な音楽であることを知る。何度通して聴いても内容を深く理解出来ないのは、単純に私に学がないことも考えられるが、kanataは敢えて分かってそれをやっているのではないかとも思う。

逆ピノキオ

逆ピノキオ

  • Kanata
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

 kanataについてはネット上でも情報が少なく、詳しく語られているサイトはない。彼らの公式ホームページも既に無くなっている。2010年にはあった気がするが、役目を果たしたということだろう。

何にも属さない性質

 彼らの楽曲を無理矢理に分類するのであれば、アブストラクト・ミュージックとなりそうだ。下敷きとしてはジャパニーズ・ヒップホップなのだが、それはあくまで取っ掛かりの部分だけであり、私が人に紹介をする時はTHA BLUE HERB、降神、MEISO、Hisomi-TNPあたりの系統ではあるが、近くても遠い、と評する。そもそも、そうしたアーティストと一括りにするのも、実際に彼らの音楽を聴いてしまうと首を傾げてしまう。良い意味で、何もかもから遠い、だからこそのkanataなのだろうと感じる。名は体を表すね。結局はよく分からないといって差し支えないのだから、とにかく不思議なグループだった。

gray room project.1

 先のアルバムは彼らが提唱するgray room projectの第一弾なのだそうだ。全三部作として、必要な時期・必要なタイミングでリリースされるとのことだったが、事実上ではもう望むべくもないのかも知れない。しかし、アルバムを聴いていると何となくまた帰って来てくれるのではないかと期待してしまう。何故かは分からないが、この音楽の一端が、際限のない世界の広がりを感じさせるからだ。もうリリースされて10年以上が経つが、まだ10年しか経ってないともいえる。今聴いても、何ら不自然なく聴けるのは、端的に優れた音楽性であることも表しているだろう。これからまた10年が経っても聴いているかも知れない。

sound of neon

sound of neon

  • Kanata
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

 kanataは所属しているメンバー全員が東大生(既に卒業しているだろうが)らしく、今は社会で活躍をしているであろうことを考えると、音楽制作は私生活が忙しくて難しいのであろう。ただ、少し希望を抱いているのは、いつのタイミングかは分からないが、本アルバムがiTunesで販売されるようになったからだ。記憶が確かなら6年前はなかったはずだ。カルト的な人気があったのか、Amazonでは一時期10万円を超える額で出品されていたが、現在は手軽に聴けるようになった。iTunesに登録をされた経緯は分からないが、本人たちが配信をしているのであれば、まだ音楽に対しての興味は失っていないだろうと、勝手に期待をしてしまう。

 今は90年代と比べて、日本のヒップホップもよく聴かれるようになった。とても良い時代になって、さんピンCAMP世代の私としては嬉しい限りだが、彼らのような独自の意思を強く抱いていたグループがいたことも知って欲しい。

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