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昭和生まれを刺激する『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(実写版)』を鑑賞しました《評価・感想・レビュー》

アニメ映画公開!

 もともと、本作のことは全く知らなかったのですが、アニメ映画公開ということで知ることが出来ました。タイトルが良いですね! 長いけど! 調べてみると、昔フジテレビで放送されていたオムニバス・テレビドラマ『if もしも』という番組が初出だったそうです。1993年とのことで、相当前ですね。かなりファンが多い作品のようですので、気になりました。そうしたらですね、何と近くの映画館で実写版がリバイバル上映されるというじゃないですか!? タイミングが絶妙に大変よろしいので、足を運んで観て来ました。なお、アニメ版はまだ未見。

 上映されているのは単館系の映画館でしたが、そこもまた懐かしさがあって良かったですね。あまり映画館で映画を観ない人間なので、ほぼシネコンでしか映画を観た記憶がございません。小学生の頃は近所の公民館などで観た気もするけど、もう遠い記憶ですし……。古い映画館で古い映画を観る経験も希少なのではないかと、逆にワクワクしましたね。

 さて、映画の感想を一言でいうと、奥菜恵がめちゃくちゃ可愛いです。結論を書いてしまった……。

 なお、本稿はタイトルにも書いてある通り実写版の感想となりますので、お間違いなく。

あらすじ

 ある港町の夏休み、夏祭りが開催される日に、小学生の典道(山崎裕太)は登校日のため学校へ向かった。学校では友人たちがいつも通りに馬鹿をやっている。典道はその中で特に仲が良い祐介(反田孝幸)と、プールで競争をすることになる。勝ったらどうするか、同級生のなずな(奥菜恵)という女の子に告白をする! そんな他愛もない話をしていた二人を見ていた当のなずなは、典道と祐介、勝った方と駆け落ちをしようと密かに思う。実は彼女の両親は離婚をすることになっており、それに歯痒さを感じた彼女は精一杯の反発をし、そんな計画を立てたのだった。果たして、どちらが勝つのか? これは勝負の行方が左右する二つの物語。

短編ながら昭和生まれの琴線を刺激するノスタルジー

 本作は短めの尺で、大体45分くらいだったかな? コンパクトにまとまってはいますが内容は濃く、一分一秒に見所が凝縮されているような感じでした。すぐに引き込まれて、あの日あの時、幼少期の情景が思い起こされるノスタルジーな気分にさせてくれます。小学生の頃、クラスのあの娘に恋をしたよなーとか、夏休みだからって友達と馬鹿やってたよなーとか、意味もなく嘘吐く奴いたよなーとか……。このドラマの世界観は、とにかく演出・描写が、心の琴線を刺激するものとなっています。懐かしいと思わずにはいられません。スーパーファミコンでマリオワールドやってるシーン良かったです。懐かしい。

ヒロインなずなの魅力

 本作の主題は二つだったと思いますが、一つは小学生同士の年相応な言い争い<打ち上げ花火は横から見たら丸いのか? 平たいのか?>、そしてもう一つが<プールでの勝負は典道が勝つのか? 祐介が勝つのか?>です。より後者の方がメインのはず。このプール対決の勝者がヒロインのなずなから選ばれ、その後の運命が変化するわけです。実際に、『if もしも』の名の通り、いずれの場合についても鑑賞することが出来ます。どちらも実際に起きたことが前提として描かれるわけですから、プールの勝負ひとつでこんなに運命が変わってしまうのかと、なかなか驚きでした。

 いずれのパターンであっても、なずなは駆け落ちを決行するのですが、典道ルートと祐介ルートとでは男の子側の行動が異なるため、なずなにとっては自分の言い分を真摯に捉えてくれた典道ルートの方が良かったように感じます。しかし、祐介ルートも案外、彼の気持ちが分かるんですよね。小学生らしい行動というか、普通、女の子から誘われたら自分が周囲の友人から浮いてしまわないか心配になるでしょうし、男子連中と遊んでいた方が気が晴れるというか、そちらに流されてしまうのも仕方がない。意味もなく、その誘いを受けないように逃げてしまっても仕方がない。ここには、祐介の揺れ動く幼い男心というのが見え隠れしました。

 逆に典道ルートの場合は、これは彼の性格だからこそだとは思いますが、なずなの逃避行に付き合うわけですね。「こんなことをしてもどうしようもないのに」と、どこかで二人は気付いているわけですが、でもその夏休みの一日を永遠にするためには、そうするしかなかったということも分かります。両親の離婚は止められないし、夏休みが終わったら転校をしなければならない。その事実は運命として変わらない、だけど過程は変えられるかも知れない。その夏の中で、思い通りにいかなくても、行動をすることによって何かが変化する可能性が少しはある。なずなは、その薄い願いを信じていたのでしょう。

 本作は、本編のどのシーンを切り取っても、なずなの儚げな美しさが映像に映えていました。何というのだろう……胡蝶の夢のような、危うげで定まっていない感じもあるのですが、その境界で心が揺れる様を見事に演じた奥菜恵は素晴らしかったですね。

 ラスト、一筋の光の中で遊ぶ典道となずなのシーンは、特に格別な色彩に彩られていました。岩井俊二監督凄いっ! と、驚嘆したものです。

 全体的に文学的な傾向が強い映画で、何度も見返したくなる方の気持ちも分かりました。映画的な面白さ、というよりは、お気に入りの小説を読むような感じですね。噛めば噛むほど美味しくなる、そんな印象を持ちました。

 アニメの方も近々、観てみようと考えております。

エンドロールでビックリ!

「ええ映画だったのう」とボンヤリしながらエンドロールを眺めていて驚いたのが、なんと助監督の所に行定勲監督の名前が!? おー、関わっていたんだ……。行定勲監督の叙情的な表現手法は岩井俊二監督の影響もあるのだなぁ、と何となく思ったのでした。

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