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天才詐欺師の孤独『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を鑑賞しました《感想・評価・レビュー》

実話らしいけど

 ずっと前から、この映画は観たいと思っていたのだけど、実際に鑑賞したのは最近で、観たいと思っていた頃から10年は経っているのかな。本作が日本で公開されたのは2003年で、今から約14年前。レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスがメインで出演しているのだけど、どちらも若いのが見えると「ああ、俺も歳を取ったんだなぁ」と感慨深くなる。本当にめちゃくちゃ若い! 映画は歴史だから、そういった気持ちが芽生えても不思議ではない。端的に、観て良かったと感じた映画だったので、経験としては得難いものだった。

 本作は実話を元にしたらしいけど、調べてみると、かなり脚色も激しいようで、内容については話半分に評価しても構わないのではないだろうか。まぁ、脚本・演出を含めて出来過ぎな感じはするが、ノンフィクションを元にしたフィクションとして評価するのであれば、素晴らしい出来であったと思う。

 先日鑑賞した『インフォーマント!』と比べても、楽しめた度合いはこちらの方が上であった。そちらの作品は、嘘吐きの話で、こちらの作品と同様に人を欺く男の話だったが、爽快感ではディカプリオが演じたアバグネイルの方がよっぽど上、恐らく、格が違うのだろうと思われる。嘘を吐く人間は知的であり、技術がなければならない。マーク・ウィテカーと比べるとアバグネイルの方が人を欺く才能、それから魅力があったのではないだろうか。だからこそ、本作は鑑賞をしていても嫌味がなく、生きる術としての他者に対する欺きがあった。だからこそ面白かったのかなと、私は評している。

 ただ決して真似をしてはいけない生き方だけども。

あらすじ

 幸せな家庭に生まれたフランク・W・アバグネイル・Jrは、父親の経済的失脚により、家庭崩壊の憂き目に遭う。両親の離婚を切っ掛けに家出をし、小切手詐欺によって日銭を稼ぐ毎日。しかし、それを繰り返すにつれ、彼は偽造の技術・経歴詐称の詐術を身に付け、悠々自適の生活を送るようになる。飛行機のパイロットやホスピタルの医者など、本来の自分とはかけ離れる人物を演じながらも毎日を過ごす内にFBIに目を付けられる。逃亡と詐欺を繰り返しながら、アバグネイルは自らの生き方を模索することとなる。


キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン - 予告編

嘘を吐くこと、人を欺くことの魅力

 嘘を辞書で引くと以下のようになっている。

1 事実でないこと。また、人をだますために言う、事実とは違う言葉。偽 (いつわ) り。

2 正しくないこと。誤り。

3 適切でないこと。望ましくないこと。

出典:goo国語辞書

  ここには、人を騙すだとか、正しくないとか、適切でない、望ましくないとか、とにかく否定的な事柄が記されている。しかし、ある程度の人々は嘘を吐くし、嘘を吐かない人だってそれを免れることは出来ない。噓も方便という言葉があるが、それは最もだと思う。嘘は潤滑油という言葉もあって、世の中ではそれなりの嘘は必要とされているのかも知れない。本音ばかりで語ると世界は崩壊しちゃうだろう。

 さて、嘘には技術が必要だ。相手を騙すような嘘を吐くのであれば、ある程度の信憑性を持たなくてはならない。信憑性を担保するのは事実であり真実である。誰かを本当に騙そうと思うのであれば、嘘の中に真実を織り交ぜなければならない。ある体では、本当のことを話しながら、その中に自分にとっての優位性を保つための嘘を織り交ぜる必要がある。そしてそれが相手に検証されないのであれば、嘘ではなく本当になる。嘘を使うのであれば、それに対して対象がどう考えるか、行動するのかまで見当を付けなければならない。アバグネイルはその辺りの想定が上手いのだろう。頭の回転の良さから導き出される魅力的な話術で対象を手玉に取る。騙された側は金を奪われることになるのだが、アバグネイルはどうにも憎めない人物のようだから、本気で恨まれることは少なかったんじゃないだろうか? 少なくとも、映画で描かれている部分ではそう見える。まあ、実際はとんでもない額の金を私的に遣っていたのだから、そうもいかないだろうけど……。

 しかし、端的に言って、ここまで悠々自適に自分を貫き通すことが出来たのは、彼のそんな魅力によるものだろう。多分、一緒に酒を飲む分には楽しい人間なんじゃないかと思う。

彼は孤独だったのでは?

 世界を股に掛けて詐欺を働き、FBIに追い込まれれば逃げ回る、そんな生活を送っていたアバグネイルはひとところには留まれない。これは相当に辛い毎日だろう。ストーリーの中で、愛する人を見付け、共に暮らすために結婚を決意する場面もあるが、結局はFBIがやってくる。アバグネイルは逃げるしかない、そこで妻となる女性に共に逃げ出すことを打診するが……しかし、彼の願いは叶わない。結局は一人でいるしかないことを、アバグネイルはこの時に悟ったのではないだろうか? その孤独を解消するためには、罪を償うことしかないのだが、なかなか決心も付かないアバグネイルは逃げ続けて詐欺を重ねていく。だけど、何となく思うのは、映画のタイトルからも分かるように、彼の孤独を唯一癒していたのはFBI捜査官だったんじゃないか? ということ。

 それが顕著に示されていたシーンがあります。クリスマスになると毎回、アバグネイルは自らの危険を冒して捜査官のカールに電話を掛けます。そして自分の居場所を教えてしまったりするのですが、この時の心境はまさに<寂しい>だったんでないかと。私も一人のクリスマスは無性に寂しくなりますし(関係ない)。

 なお、トム・ハンクスが演じたカール捜査官は実在の人物ではなく、何人かの担当捜査官をまとめて構想したらしいけど、いずれにしろ、世界の何処にいても必ず追い掛けてくれる存在がいるというのは、もしかしたら有り難いことだったのかも知れませんね。それが公権力であったとしても。この関係性は、まんまルパン三世と銭形警部です。

オチが素晴らしい

 14年前の映画なんで、今更ネタバレ注意もありませんけど、この映画の終盤の展開は結構驚きました。ミイラ取りがミイラになる……とは違うか、全く真逆の意味で、ミイラがミイラ取りになる、ですね。

 つまり、詐欺師をしていたアバグネイルがFBIに入り、詐欺専門の操作をお手伝いすることになると。天才的な詐欺技術を身に付けていたアバグネイルは、ベテラン捜査官顔負けの実力を遺憾なく発揮してFBIに貢献するようになったと……これは熱い展開でした。爽やかな展開でスーッと終幕するのは、観ていて清々しかった。人気がある作品なのは知っていましたが、癖のない炭酸みたいな映画でしたね。

 休みの日に暇だけど、くどい映画は観たくないなぁ、という方にオススメの映画となっております。また14年後に観ようかな。

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