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天才の孤高さ『すべてがFになる The Perfect Insider』を読みました《評価・感想・レビュー》

6年ぶり二度目

 こちらの本は読むのが2回目です。見出しにもある通り、2011年に読んでからだいぶ月日が経ったのですが、最近になって「そうだ森博嗣の小説そろそろ読み進めていこう!」と思った時に、本作の内容をすっかり忘れてしまってました。S&Mシリーズを読んでいくにしても、根幹となるこの作品を理解していなければ、後々に困ることになるかも知れない。ちゃんと読まなきゃなぁ、と思って読みました。オチも忘れてたしね。

 それで改めて感じたのですが、この小説の内容はPC関連のスペックについての描写は除いて、その他の点には一切古さを感じさせないんですね。意図的にそうしているのもあるかとは思いますが、端正な筆致に加えて、物語の設定や根底に流れる思想などが納得感の高いものだからか、むしろ昔よりも今の方が興味を持って読み進めることが出来ました。不思議なものですね。

 本作は1996年に発行されたものです。今から21年前で、ひと昔前といっても過言ではありません。41歳の人が20歳だった頃です──当たり前のことを書いてしまいましたが、感覚的には捉えやすいのではないでしょうか? 先述もした通り、本作には古さを感じません。それはストーリーに一定の普遍性があるからでしょう。小説を古くしないためには、テクノロジーを執筆当時の世界に合わせ過ぎない……固有名詞を使用しない……などと色々な方法があると思いますけど、それらが複合的に、上手く絡み合って出来ているのが森博嗣の小説ではないでしょうか。

 実際、すでに数年前ですが、この作品がアニメ化されると聞いた時は驚きましたよ。それって凄いことですよね。20年ほど前の原作をアニメにするっていうんですから、勇気がある。ああ、そういえば綾野剛が主演しているドラマもありましたね。いずれにせよ、時代背景の考慮をしなくて良いからこそ、アニメにせよドラマにせよ、現代を舞台にしても、容易に映像化出来るというのは作品として優れた点と評価して良いでしょうね。

 こんなこと書いてますが、私はいずれも観ていないので、観なきゃなと思ってます。積読みたいなもので進まないんですよ。気が向いたら。

 それは、許して欲しいと思います。

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天才とは何か

 以下、ネタバレが含まれる可能性がありますので、未読の方はご注意ください。

  あらゆる物語で天才が出て来ます。

 天才と呼ばれる者たちはどうしてそう呼ばれるのか、永遠のテーマでもありますけど明確な回答があるわけではありません。私の個人的な考え方では──天才とは、万人が思い至らない解法を、あらゆる問題に対して瞬時に提示出来る者。何ですが、まあ人それぞれですしね。天才と呼ばれているのに、正攻法の能力が高いだけではつまらないし、歪曲した手段であっても、正解まで短距離で辿り着ける思考を備えている人間の方が面白いじゃないですか。これは、会話においてもそうです。天才は天才だけの世界を持っているので、二段か三段飛ばしで物事の本質に辿り着いてしまうような……ね。私個人の勝手なイメージだと、そんな感じかな。

 それは置いといて、『すべてがFになる』にも天才が出て来ます。そう、有名な真賀田四季博士のことです。主人公の犀川創平も十分天才だと思うんですが、真賀田四季は抜きん出て天才ですね。*1

 彼女の何が天才か、それは目的に対して執る手段が最も効率的で、そして、その手段を躊躇なく選択する強靭な精神を持っていること。ええと、「一番良い選択をするのなんて、そんなの当たり前だよ」と思われるかも知れませんが、何かを処理する時に沢山の選択肢があったとして、その中のどれか一つを選ぶ時にA、B、C、Dとあったら、大抵の人間は前提条件を材料として検討するはずなんです。つまり、Aを選べば最も効率が良いのだが、それを遂行するための条件が満たせないという場合、BやCを選んでしまうということです。しかし、真賀田四季はその点がハッキリしていると。常人には前提条件で選べない選択肢が沢山ありますが、彼女はその箱を簡単に開けてしまうのです。天才ですね。

思想を読む小説

 私は森博嗣の新書ばかり読んでて、彼の人間としての考え方を尊敬しています。なんというか、正論が多いんですよね。大体、どんな人に対してだって考え方の違い「こいつ、何いってんだ」というのがあって然るべきだと思うんです。でも、森博嗣にはそれがないんですよね。これ、ある意味では怖いことです。きっと、相当にフラットな感覚を持った方なんだろうなと思う。本人は決してそんなことは思っていないだろうけど、私は非常にフラットさを感じます。

 彼の<つぶやきシリーズ>という、日々思いついた呟きに対して、それへの解説を100篇ずつ収録している文庫本があるのですが、これが森博嗣という人間の思想を知るには適している内容だと思います。興味のある方はどうでしょうか。

 と、少し脱線してしまいましたが、森博嗣については小説を読む中で、その登場人物たちの思想を読むこともとても楽しい経験になりえます。頻繁に正鵠を射る言葉が出て来ますし、その度にメモしてしまいますね。読み物として優れているのはいうまでもありません。さっさと大量消化していかないと、先に私の寿命が来てしまいそうですので本稿はこのへんで。【管理番号:も001-001-001】

*1:Macbookの予測変換で勝手に両者の名前が出て来て感動。

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