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平坦なドキュメンタリータッチとしての映画『戦場のピアニスト』を鑑賞しました《評価・感想・レビュー》

相変わらず前情報なく何となく鑑賞する

 映画を観る時に、敢えて事前にどんな作品なのかを調べないことがよくある。それが正しいか間違っているかはよく分からないけれど、生粋のジャケ買い男としては、そんな無鉄砲なやり方もアリなんじゃないかと思っている。別に面白くない作品だったとしても良いし、面白くない作品だったとしても、それなりに語りがいはあるもんだ。中身の分からないブラックボックスに手を突っ込んで、感触だけでそれが何かを探り出すことには楽しみがある。どうせ、繰り返されている毎日だってそんなもんだし、フォレスト・ガンプだって「人生はチョコレートの箱のようなもの。 開けてみるまで中身はわからない。」と言っている。ちなみに、『フォレスト・ガンプ』はまだ観ていない。予告は観たけど、近々体験してみようと考えている。このセリフは何となく知っているだけ。

 さて、『戦場のピアニスト』だが、タイトルから戦争映画であることは何となく分かっていたけど、舞台がどこかとか、そんなことは知らなかった。実際に観てみるとナチス・ドイツの映画か……主人公のピアニストが迫害されていて大変そうだった。居た堪れないお話ではあるが、歴史的な価値はありそうな作品だと感じた。

 ナチスが絡んで来る作品で私が経験したことがあるのは、最近だと手塚治虫『アドルフに告ぐ』ですね。スリルがある話だった。後は昔々に『善き人のためのソナタ』だが、これは微妙に舞台となる時代が本作とは異なっているのかも。

 いずれの作品にもいえるが、戦争が生む陰鬱さ、人間の残酷さを明確に描いている物語は、実際にあった事柄をベースにしていることも多いからか、どうにも緊張感が薄れてしまう。ドキュメンタリータッチの映画は実話を元にしているから脚色されたドラマティックな話はない。そんなのは至極当然だし、それはそれでいいんだけど、やるせないほど途轍もなく淡々としている。そのせいか、映画を観ている私には緊張感が芽生えなかった。

あらすじ

 ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)はいつものようにラジオ局でピアノを弾いていた。しかし突如として彼の住む街は戦争に巻き込まれる。すぐに終わるであろうといわれた戦争だったのでシュピルマンは家族と共に安堵していたが、予想とは裏腹にナチスによる侵攻が進む。非人間的な扱いを受けるユダヤ人は次々に虐殺されてゆき、シュピルマンは家族とも離れ離れになってしまう。一人取り残された彼は、第二次世界大戦を生き延びることが出来るのか?


あの名作をデジタルリマスター版で!映画『戦場のピアニスト』予告編

ビジュアル的に当時の世界を振り返る

 こちらからネタバレも含むため、未見の方はご注意ください。

 本作は実際にナチス・ドイツから迫害を受けたロマン・ポランスキー監督がメガホンを取っている。そのせいか、当時実際に起きていたことを丁寧に描いている……ように見える。私は経験していないので事実かどうかは分からないが、ナチス・ドイツによる残虐な振る舞いは身につまされるものがあった。ビジュアルが伴っているので「こんなことするの、本当に人間なのかな?」とは思った。まぁ、おいそれと考えなしに人間を銃殺したり、車椅子から立てない老人を高い所から投げ飛ばしたりする様は、それなりにショッキングな光景ではある。ただ、残酷な世界を描いているのは分かるのだけど、血液や臓物が飛び散る訳ではないので残虐感は薄い。その辺はさっぱりとした無闇なキレイさを感じてしまう。これは別に、血液や臓物が飛び散って欲しいと言っている訳ではないので、そこは誤解せず察して欲しい。

緊張感を得られなかった理由

 何故、ユダヤ人が残虐な行為をされているのに緊張感がないんだろう? と、疑問に感じたので考えてみたのだけど、何となく私が辿り着いたのが、酷い行為をされてしまうユダヤ人達に<諦めの悪さ>もっと言えば<みっともなさ>がなかったからじゃないかと思う。この映画で出て来るユダヤ人やポーランド人は綺麗過ぎる、清潔過ぎるのだと感じた。ストーリーの中で、ドイツ軍人の残虐行為で撃ち殺される人間は沢山出て来るが、みんな銃弾一発でほぼ確実に殺される。撃たれる箇所によるが一撃必殺は不自然じゃないか? いや、そりゃ頭を撃たれたら即死するだろうけど、腹を撃たれたら逃げるなり足掻いて反撃するなり、そうした「ダメだと分かってはいるけどやり返して一人でも道連れにしてやる心意気」ってのが一切出て来ない。

 これは別の言い方で先述した「みっともなさ(どうせ死ぬけど立ち向かう姿)」というものなのだけど、どうにもみっともない人間がこの映画には全然出て来ない。だから、凄く一方的で感情が希薄で淡々としていて緊張感がない。象が蟻を踏み潰し続ける様を観察していたとしても、そんなものには何も感じない。力の差があってもみっともなくても諦め悪く立ち向かって散るのが、ある種では人間らしさではないのだろうか。そういう姿はほとんど描かれない。さすがに、実際はそういうことあったでしょう、少しのケースでも、ダメ元でドイツ軍人に歯向かったユダヤ人だっていたはず。

 本編で唯一、ユダヤ勢力のレジスタンスがナチス・ドイツに反撃を企てて実行するシーンがあるが、シュピルマンの目を通して見ているからか、戦局が明確に描かれず、まるでテレビの映像を眺めているかのようだ(当たり前のことを書いているが、つまりシュピルマンにとって肉眼で見詰めているのにニュースを観ているかのような現実感のなさ)。ロマン・ポランスキー監督は自身の生い立ちのこともあるだろうが、徹底的にドイツ人だけを悪者に描こうとしたのかも知れない、迫害される側はか弱き羊で、とにかく力のない哀れな者として描いている。だから反撃しない、していても力の差があり、印象が薄い。

 ただその中で、シュピルマンだけは醜くても生き恥を晒しても、とにかくこの戦時下で生きることだけを追求していて、比較的に人間らしい人間として感じられた。みっともないから、人間らしい。それから、シュピルマンを救ったドイツ人将校のヴィルム・ホーゼンフェルトも、彼が放った最後の一言で強い人間らしさを感じることが出来た。みっともなくて良い。それくらいが印象に残ったことかな。少ないね。

 どうにも、私がこの映画を観ていて再認識したのは、やっぱり自身の映画の見方が相当に歪んでいるなぁ、ということ。本作はつまらない作品ではなかったし、実話を元にした映画として多大な評価を受けている点も含めて、歴史に残すべき作品なのだろう。しかし、私には淡白過ぎて肌に合わなかった。もっと泥臭い人間が出て来ていれば評価も変わったかも知れない。よって、手放しで絶賛するつもりはありません。単純に肌に合わなかったという感じでしたね。

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