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点在する砕けた断片を拾い集めるような『後遺症ラジオ 1巻』を読みました《評価・感想・レビュー》

私とホラーな話について

 ホラーというジャンルについて、私は意外と苦手だったりする。

 ただ<漫画><小説><世にも奇妙な物語>などであれば大丈夫だが、<映画><ゲーム><心霊スポット>であると本気でビビってしまう。そこで簡単に自己分析をしてみると、具体的な映像(ビジュアル)が伴ったものが心理的に分かりやすくて怖いのだな、と気が付くのだが、例外的に、そういったビジュアル的なものであっても面白みが差し込まれていれば頑張って体験し続けることが出来る。

 ジャパニーズホラーの金字塔『リング』の初めて映画になったものを劇場で観たけど、あれはマジで未だに怖いからね。しかし、あのレベルのものってもう殆ど無くなって、最近のホラーには面白味がスパイスとして加えられているような気がする。面白味ってのは小気味好い「滑稽さ」「コメディさ」「笑かし」などのことで、ひたすらに真面目に恐怖を演出し続ける物語よりは取っ付きやすくなる。というか本当に助かる。私がそうした印象を受けた作品は秋元康『着信アリ』やサム・ライミ監督の『スペル』、あまり多く語られることはないがスーパーファミコンで発売されたイマジニアの『ざくろの味』など。こういった作品にはツッコミを入れながら楽しむことが出来る。能動的にwin-winの関係性を保つことが出来るホラーであれば大好物だということだ。

 話は長くなったが、本作『後遺症ラジオ』も私にとっては取っ付きやすい作品であり、随所に面白味が含まれていて好物だ。物語の構成が特殊なので、ストーリー全貌については謎が多いが、断片的に語られる恐怖は滑稽さも含んでいて「ははっ」と笑えながら読める。ん、もしかしたら私だけかも……。

あらすじ

………か……みぃ…………手手手ッ……手…て……………火………………う…しろ…に………血………ぅ…………か…影……………イタぃ……痛ぃ……た……ぃ……………こ…ぶぅわ……箱………………子…ド…モ………藁……………ハ………鋏…………テ………断…………ぎょおおおおおッ…………ぅオ……グ…シ……サッ…………………コチラハAERN-BBC、「後遺症ラジオ」デス。チューニングノ必要ハ……アリマセン。

──講談社コミックプラス「後遺症ラジオ(1)」より引用

散らばった断片を収集するのは読者

 あらすじを読んで頂いて分かる通り、まさにストーリーはラジオのチューニングをしている時のような、様々な断片的世界を往来するかの如くに進んでいきます。正直、1巻の段階では、この作品がどういった目的で物語をどこに運ぼうとしているのかを推察するのが難しくなっております。しかし、垣間見られる各話については一見繋がりがあったり、全く関係がなかったりする。読者側が「あれっ、これはもしかしてさっきの……」というように気が付いて前の方のページを読み直したりするのがまた楽しい。

 なお、各話のタイトルが全て「99.99NHz」というような周波数で表現されており、その記載も昇順にはなっておらずバラバラです。このバラバラ感や物語の順序が入り混じって複雑な構成だと感じましたが、おそらく作者の何らかの意図が含まれていて緻密な計算の上に成り立っているのではないかと思われるのです。あとで真相が明らかになったら「ぁあアアアァ!」ってなりそうなので、私は楽しみなのです。

不気味で結論が語られない物語

 こちらから少し本編について触れていきますので、未読の方はご注意ください。

『後遺症ラジオ』1巻を読む限りでは、おかしな幽霊のようなものが人間世界におかしな影響を与え始める様が描かれています。その幽霊も、普通の幽霊とは違い(普通の幽霊って何やねんというツッコミはさておき)、現世にめちゃくちゃ干渉してくる。生きてる人間の髪を引っ張ったりとか、影響が凄い。これ書いてて思ったけど、そもそも幽霊じゃないのかな? 語られている断片の中で「おぐしさま」という謎の言葉が出てくるのですが、「おぐし」って感じで書くと「御髪」なんですよね。確かに髪にまつわるエピソードも多いし、様が付いているだけあって神にまつわるエピソードも含まれてたり。きっと、メインテーマとなるのは<髪と神>なんでしょうね。ギャグではないと思いますがホッコリします。

ホラーに入り混じる面白味について

 それぞれのお話には超常現象みたいなことも起きますし、幽霊っぽい手が沢山出て来たりとか色々とあるんですけど、アップになって出てくる霊的なものの顔とか、行動とか、どうにもコメディちっくに感じることがあるんですよね。不気味な変顔で迫ってくる心霊物体とかどうしたら良いのだ。私だったら、身の危険を感じつつ笑ってしまいそうだ……実際は深刻な内容が多いのですが、真面目に深刻をやってるので、その間に笑ってしまうことがあったりします。就職の面接や、校長先生の朝礼の時とか真面目な態度でいないといけないのに私はニヤッと笑ってしまいますし、たまに吹き出したりしちゃいます。きっと根っからの不謹慎なんでしょうね。同じように真剣なホラー漫画を読んでいても気を許してると「これはギャグなのでは!?」と思って笑ってしまいます。

 本作も私の基準では笑えるシーンが多くて好意的な印象です。だって、藁人形が巨大化して歩いたりとか「日本版ウィッカーマンじゃん!」ってなっちゃいますよ。作者の方にはすみません。

 あと、別件ですが本作の作者である中山昌亮が描く女の子はマジで可愛い。これは間違いありません。そんな可愛い女の子が心霊現象に脅かされているのを見ると心が痛むよな……ヒーロー的な人が出て来てくれると良いのですが。

 最後に、1巻では札幌の地下鉄が出て来て最高にテンション上がりました。さすが北海道出身ですね。2巻以降も改めて読み返してみたいと思います。【管理番号:な001-001-001】

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