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気遣い出来る良いおっさんの悲劇『Father』を観賞しました……《評価・感想・レビュー》

気軽に観られるショートムービー

 サクッと観られる映画ってないかな、とdTVザッピングをしていたら──dTVにはショートショートもあるんですね。5分から20分程度と、時間的にも多岐にわたる印象で、少ない時間でも「あー映像作品観られたわー」と満足出来る感じでハッピーになれます。

 それで今回はLotfi Achourというチュニジアの監督が撮影した『Father』というショートムービーを観ました。こちら、個人的には結構な衝撃を受けました、良い意味で。

 さて、こちらから少しずつ内容に触れていきます。オチには言及しないつもりですが、未見の方はご注意ください。

あらすじ&本編

 チュニスでタクシードライバーをしているエディは、ある夜、産気づいた妊婦を病院まで乗せる。このつかの間の出会いが予想外の悲劇を生み出し、彼の人生を一変させてしまう。


Father (Pére or boulawled) / Lotfi Achour, (Adult only)

 違法なアップロードではなく、クリエイティブ・コモンズですのでご安心を。というわけで、こちらで全編観賞が可能です。日本語字幕がなくても大丈夫な方はどうぞ。

騒がしい話ではなく淡々としているが……

 私はあらすじを読んでから映画を観ました。おそらく、主人公が何かしらの事件に巻き込まれて、知らない内にえらい目に遭って超苦労する! みたいなのを想像していたのですが、そもそもそんな内容を描くのであれば18分は短過ぎるって話でした。実際は全然違います。ショートフィルムをあまり観たことがなかったので大事なポイントを忘れてましけども。

 ショートフィルムは、ストーリーの要点を絞り、一つの短いシークエンスを丁寧に描いていって、しかし短いなりに観賞した者の心に何か爪痕を残すようなもの。下手打つと本当につまらないものになってしまうし、逆に上手に描くことが出来れば長尺の作品にも負けないようなインパクトを含ませることが出来る。考え方としては短編小説にも近いですね。短いと、むしろそれだけ難しいっていう。

 本作も淡々とした作りではありますが、ちゃんと強靭な爪痕を隠し持っています。

知らなくても良かったことを不意に知ってしまう瞬間

 主人公のエディはタクシードライバーとして働いていますが、妻もいて子どももいて、特に人生に不満などはありませんでした。しかし、あらすじにもある通り、とある事態に巻き込まれることによって、一気に人生について考えさせられることになってしまう。「産気づいた妊婦なんて乗せるんじゃなかった……」と、エディは後悔してるかも。とにかく私はこの作品を観ていて「めちゃくちゃ辛い!」と思ったし「うわーぁ辛い」と思わず呟いてしまった。いや、別にそこまでいうほど強烈などんでん返しがあるわけではなく、鑑賞者もエディと共に、タイトルにある通り<父親>について深く思いを巡らせることになる切っ掛け、嫌な事実を不意に知ってしまうわけだ。

 誤解なきように書いとくと、この場合の父親とはエディの父親ではなく、父親であるエディ自身のこと。端的にいうと「俺って何なんだ?」ってなっちゃうということです。ああ、また辛くなってしまった……。不用意なこと書いてるとネタバレしちゃいそうなのでここまで。

優れたショートムービーであることは間違いないです

 観る人によっちゃ、非常に退屈な話かも知れません。だけど、エディの心情がよく描かれてて、感情移入すると「とにかく辛い!」そんな話です。ええと、辛いドラマが好きな方にはオススメの作品かな。あと一本線を加えたら幸せになるんですけどね。本当に辛い。

 ちなみにですが、本作は<ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2015>にてインターナショナル部門優秀賞を獲得しています。監督、日本にも来てたんですねー。是非、長編の作品も観てみたいと思います。なんかよくよく考えると「辛い」しか書いてないのですが、仕方ないです辛いので。

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