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没個性テーマパーク:EXTRA

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もしも魔女が現代に存在したら? 魔女と世界の関わりを丁寧に描く『現代魔女図鑑 1巻』を読んだ《評価・感想・レビュー》

魔女はロマン

 そうです。魔女はロマンです。マロンじゃなくて、ロマンです。女の子が魔術で何かをどうにかするってのは、不思議とスペクタクルさを感じさせて良いですね。ジブリ映画『魔女の宅急便』を思い出してしまいますが、やはり、箒にまたがって空を飛べるようになったら、運送業が出てきて然るべきなのでしょうか。いや、この『現代魔女図鑑 1巻』には運送業の話は出てきませんけど、第一話の1コマ目で魔女のバイク便(箒にまたがってバイク便)が描写されているので、きっと今後そういった話も出てくることでしょう。

 詳しい前知識なしで読んだのですが、オムニバス形式のコミックで非常に読みやすく、純粋に楽しむことが出来ました。また、それぞれの話が簡潔なストーリーで短くまとめられておりましたが、ぶっちゃけ先を読みたいな、と感じるお話も多く、作者の伊咲ウタはキャラクターの魅力を描くのが上手いと感じましたね。というわけで感想を書いていきたいと思います。以下、ネタバレが含まれる可能性がありますので未読の方はご注意ください。

或る魔女の願い事(第1話)

 現代社会に魔女が当たり前に溶け込んでいる。そんな世界だったら、魔女は世界からどのように取り扱われるのだろうか?

 実際の世界の歴史であれば、魔女は人とは異なる者として迫害され<魔女狩り>というものもありましたが、この漫画の世界では<ちょっと人と違う><むしろ重宝されたりする>なんて感じの存在です。野球が上手いとか文才があるとか、それくらいの特殊能力として描かれています。ただ、この能力ってのは後天的なものではなく先天的(血筋)なもので、誰しもが望んだり努力したからといって魔女になれるわけではない、というのがポイントとなっています。

 この第1話では、魔女と世界の関わりがサクッと描かれており、導入部として分かりやすく設定されています。本話の主人公の女の子は魔女の妹であるが、姉貴の魔女が超強くてサバサバ。というか、魔女って結構万能なのか? 何でも出来ちゃうのか? 限界がないのか? と、様々なことが思い浮かんでしまう話だった。オチも素直に考えるとかなりとんでも無い。単純に姉貴の魔女が超優秀ってだけかも知れないが、この妹さんも色々と悩んでるみたいだし、この姉妹には今後も頑張って欲しいなという感じ。

或る魔女の人助け(第2話&第3話)

 主人公の男の子が<魔女>という設定。うん、「魔女」なんだ。済まない。第2話にして面白い設定だなぁと感心。しかし、どうして魔女なのだろう。「魔男」じゃダメなのか? マジョに対してマダン、もしくはマオトコになってしまって浮気相手のように扱われてしまうためNGなのか。何はともあれ、この主人公の男の子が魔女の素質を持っている自分にコンプレックスを抱いており、なるべく周囲にそのことがバレないように人生を過ごして来ている様子。そんな折に、学校で魔女(こちらは女性)に出会って自分の殻を破るという話。この話は学校が舞台で、<魔女部>という部活が出て来て便利屋みたいなことをしている。

 これ、この設定だけでシリーズ化出来るくらいによく出来た設定だなぁと思った。ありきたり過ぎて新人賞に送っても落ちそうだけど、私は好き。色々な事件を解決していく魔女二人の活躍を今後も見たいなと感じさせるような印象を受けた。

 本作、まだ2巻以降は読んでないんだけど、もしかしたら一度登場したキャラクターたちの再登場もあるかも知れん。魔女部が再び出て来るのを楽しみにして読んでいきたい。この話は話の筋よりも設定の方が気に入ってしまいました。すみません。

或る魔女のお守り(第4話)

 こちらは短編小説っぽい印象のお話。美容師である主人公(男性)と、小さな女の子(魔女)の話。短いながらも「うむうむ」と読み進めることが出来ました。

 んー、やはり先の1〜3話までにも通じますが、この『現代魔女図鑑』という漫画のテーマに<コンプレックス>はありそうですね。魔女は全人口の数%しかいないそうですが、やはり周囲と異なる自分、という点にコンプレックスが生まれやすくなる土台がありそうな気がします。しかし、コンプレックスってやつはあくまでも内的な問題なので、描くのは気を遣わなければならないでしょうね。このお話は途中でオチが読めたのですが、単純に良い話です。主人公の男性がめっちゃ素敵な奴ですね。

 それにしても、黒猫のジジが出てくるのが個人的にかなりポイントが高い。しかも、本編ではカットされたらしいけど実は喋れるとか(笑)。

 良いですね。

或る魔女と花火(第5話)

 これは短編アニメ映画になりそうな印象の物語。アニメミライとかでやってくれないかなー、なんて。今回は恋人たちの切ないお話で、ステレオタイプな印象はありますが、やっぱりこういうお話は切ない。恋人たちの永遠の別れって辛い。話の筋なので書いてしまうと、本話は主人公の男の子と彼女の魔女とのストーリーなのですが、1年間付き合った後に彼女が急死してしまうわけですね。男性はその事実が心の何処かに引っ掛かっていて多少悶々としてしまうのですが、或る時に彼女の死の遠因が分かってしまうわけです。それも、彼が予想もしない方法で、なのですが。

 魔女には魔女の悩みがあって、魔女でなければ知らないでいられたこともあるのに、という良く出来た内容でした。個人的には好き。

 多少脱線しますが、この話は魔女が交通事故で亡くなってしまう話です。とある大手ネット通販の読者レビューで「日常系ののほほんとした雰囲気の中で、感情移入をしている所で突然殺されるのはショック」「交通死亡事故で身内が亡くなっている身としては辛い」「出版社はこういったことも自主規制すべきだと思う」といったような書き込みがあり、マジか! と衝撃を受けました。こういう考え方の方は増えてきているのでしょうか? 本作での交通事故はあくまで一表現に過ぎず、そもそも交通事故であろうと何であろうと人が亡くなることは自然の摂理です。

 私の身内にも電車にアタックして自殺をした者がいますが、だとしても『GANTZ』を規制して欲しいとか思いませんし、世の中を描くのであれば、どんなに汚いものでも綺麗なものでも描くべきで、それを読み手側で受け入れて咀嚼することにより物事の分別をしていきます。夏目漱石だって自殺する人間を描いています。それすらも規制すべきなのでしょうか? 本当に、自分の気に入らないことをすぐに表現規制問題に繋げる人って恐ろしいと思います。ただ、そうした方々が少なからず存在することは確かなので、映画のレイティングのように各本の目次前にでも「本作には過激な表現が含まれております」とか「この作品には残酷描写<自殺><交通事故><他殺><暴力>などの表現があります」とか載せておかなきゃいけない時代となってきたのかも知れませんね。何だか少し侘しい気持ちになりました。また次巻以降も感想を書きたいと思います。【管理番号:い001-002-001】

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