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魔物の生態系に鋭く切り込む『ダンジョン飯 2巻』を読んだ《評価・感想・レビュー》

想像力に富むユーモラスな生態系

 モンスターというものはそもそも架空であるのだけど、しかしそうした想像力の産物にもきっとバックグラウンドはあるはずで、そこに思いを巡らせることは非常に楽しいことだ。『ダンジョン飯 1巻』は<モンスターを食べることは如何なることか?>について描かれていたが、2巻では<モンスターの生態系とはなんぞや?>ということについて細かく描かれていた。それぞれの話で語られる内容は、この『ダンジョン飯』の世界観を更に深めることに一役買っていたように思える。

以降、本巻のネタバレが含まれるので未読の方は要注意。

あらすじ

 モンスターを食べることにも慣れてきたライオス一行は、第二階層を抜けて第三階層へと向かう。モンスターも凶悪になってくるが魔物食の手練れとして活躍するドワーフのセンシも頼もしく、ライオスのモンスター薀蓄も更に冴え渡っていく。マルシル、チルチャックもそんな二人にドン引きしながらもモンスターを食べることに対して、徐々に抵抗がなくなっていく。慣れって怖いね。モンスターって美味しいね、というわけで冒険は着々と続いていく。

亜人系も食べちゃう……?

 亜人系といえば、本作で描かれていたオーク以外にも、ゴブリンやコボルト、ノーム、ラミア、メデューサ、ハーピー、アラクネとか。思い当たるものをつらつらと挙げてみたが、要は人間に近いが動物的な要素を含む生き物といえば良いだろうか。ファンタジー世界では結構な頻度で亜人系が登場する。人間とは種族が異なるので、よくよく対立しがちなのだが、やはり例外もあって、エルフやドワーフといった類は人間と共生しているものも多い。ドラゴンクエストやファイナルファンタジーでもよく登場しているので、目にする機会も多いのではないだろうか。

 さて、本巻ではオークが登場する話があるのだが「まさかオーク食べちゃう?」なんて思ったけど、さすがにそれはなかった。よくよく考えたら、人間と同じ言語が扱える亜人はライオスと行動を共にしているマルシルやチルチャック、センシですらそうであり、そんなパーティがオークを食べるわけがないよな。急にグロい内容になっちゃう。

 ここで描かれていた話としては、オークと多種族の話。この『ダンジョン飯』というファンタジー世界でオークが世界にどのように関わってきたのかが描かれている。種族が異なれば価値観が異なり、それは本作の世界観でもご多分に漏れないようであった。ただ、ライオス一行とは(結果的に)何となく上手くコミュニケーションが取れていたようで安心した。下手するとオークにやられて全滅にもなりかねなかったが、その点は良かったかな。

モンスターと擬態

  擬態とは簡単にいうと、ある特定の生き物が生存戦略の一環として、周囲の物や動物に身体の色や形を似せることをいう。ファンタジー世界においても例外ではなく、多くのモンスターが様々な<何か>に擬態している。

 やはりキング・オブ・擬態といえばミミックであろう。数多の冒険者が目指す<お宝>に擬態することが多いので、非常に疎まれている存在である。私個人のイメージではドラゴンクエストの宝箱型ミミックが有名なのではないかと感じるが、そちらに限らず様々なミミックが存在する。ダークソウルというゲームに登場するミミックはかなり不気味な姿をしており、とっても貪欲な存在である。是非、検索してみて欲しい。

『ダンジョン飯』で登場するミミックも宝箱型のようだが、これは成体の姿であるようで、成長の過程では壺や蓋、兜など宿として借りられそうなものであれば何にでも入り込んでしまうようだ。まさにヤドカリなので、見た目もそれを模している。カニやエビに近い生き物だろうから、ダンジョンで手に入る食材としては有益なものなのだろう。

 ミミック以外にもこの巻では<宝虫>というモンスターが出てくる。こちらもミミックのように冒険者を騙すためなのか、宝(宝石や硬貨)に擬態している。ただ、かなりの個体差があるので、どのような進化過程でそんな姿になったのかは興味深いところ。この食材を調理して描かれている料理はお菓子のようでなんとも美味しそう。特に、宝虫のジャムはパンに付けて食べると甘そうだ。

 これらの料理をイメージして作られたサンプルの展示会があったそうで、少し興味が湧いた。あながち悪くない出来で、本当に食べれそう。

natalie.mu

黄金の王国の謎

 本作は単純にモンスターを料理して楽しむだけの物語ではなく、RPG的な謎もしっかりと施されている。主人公であるライオス一行の最終的な目的は、ライオスの妹であるファリンの救出にあるが、物語のバックストーリーとして「狂乱の魔術師が滅ぼした黄金の王国の謎」がある。まだまだこの辺りについては殆ど語られてはいないが、その謎の解明の一端として、本巻に収録されている<生ける絵画>がまた興味深い。

「絵画の中の食べ物を食べたい!」という邪な理由で絵画の中に突入するライオスのお話なのだが、実はそれぞれの絵画で描かれている風景は黄金の王国を舞台にしたもので、恐らく過去、実際に起こった王国の事件なのではないか。ライオスはお腹が空き過ぎて気付かなかったようだが、結構重要な場面を目撃していたように思える。絵画の中でライオスに悪意剥き出しだったエルフの少女(全く真っ当な感じがしない)については、今後の物語で描かれるのではないかと感じる。伏線だったら良いなぁと個人的に期待している。

今後は何が描かれるだろうか

『ダンジョン飯』のテーマは<モンスターを料理しちゃおう>なのだが、当然そればかりに注力していたら読者も飽きが来てしまう。斬新な1巻目に対して2巻がどのような内容を展開してくるのかが楽しみだったが、生態系を描くことや冒険譚として物語に深みを与える演出などで、世界観に更なる奥行きを持たせることに成功した。1巻はインパクトという意味では非常に評価されていて、2巻はそれに対して(Amazonレビューなどでは)後ろ向きな評価が多かったようだが、私はここまでに記した通りの感想だったので、むしろ2巻の方が好みであった。今後、モンスターの料理以外の部分、純粋に物語性がどう進化していくのか、とても楽しみである。【管理番号:く001-001-002】

 

 続きは以下からどうぞ。

 ダンジョンとは一体何なのか? 迷宮世界のルールを解説する『ダンジョン飯 3巻』を読みました - 没個性テーマパーク:EXTRA

 

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