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『楽園追放-Expelled from Paradise-』 至極単純なエンタテインメント大作であった《評価・感想・レビュー》

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 巷で話題沸騰の『楽園追放-Expelled from Paradise-』を鑑賞しました。これは良い作品ですよ。

 私の中で気持ち的に「虚淵玄って、最終的にはネガティブなどんでん返しを好む人だよな……」という曲解を含んだ認識がございましたが、本作に関してはそういったことはなく、まさに王道エンタテインメント路線を突っ走った快作であったといえます!

あらすじ

 沢山の人類が地上を捨て「ディーヴァ」と呼ばれる電脳空間で暮らす西暦2400年。フロンティアセッターと名乗る者が、地上世界からディーヴァに対してハッキングを仕掛ける。ディーヴァの頑張る小娘捜査官アンジェラ・バルザックは、生身の身体=マテリアル・ボディを身にまとって地球に降り立ち、機動外骨格スーツ・アーハンを駆使し、地上調査員:ディンゴと共に、フロンティア・セッターを追い求める。


水島精二監督×虚淵玄脚本!映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』予告編

最初は不安が先行した

 いや、なにせ虚淵玄が脚本ですからね。例の『魔法少女まどか☆マギカ』によろしく、後半が鬱展開に陥ってしまうのではないかと、観る前はハラハラとしていたわけですよ。しかし、実際に鑑賞してみると、そうではなく、至極明快で爽やかな極上のエンタテインメント大作だったと感じます。

 アンニュイな物語性に陥ることもなく、勧善懲悪ポジティブ・ストーリーで、鑑賞後は朗らかで健やかな感傷を得ました。本作は、アニメ好きな人が「あーっ! スカッとするアニメ映画が観たいなぁ!」と考えているのであれば、キッチリと丁寧に答えてくれる、必見の一作ではないかと感じます。

 出演されている声優陣がこれまた豪華でありまして、釘宮理恵、三木眞一郎、神谷浩史、林原めぐみ、高山みなみ、三石琴乃、古谷徹などなど、まさにアニメ界の一線で活躍する大御所ともいえる方々が参戦をしているのであります。

 これだけ豪華なメンバーを整えながら、しかし、作中ではちょい役的な人もおり、それも勘案して「豪華な内容やなぁ」と感慨に耽るのは間違いようのないものでした。

人間は何処に向かうのか? という物語(であり命題)

 人間が今後も、ずーっと進化をし続けたとして、その未来は何処へ向かうのでしょうか? 俗物的で退廃的な肉体行動に満足を覚えたのであれば、更なる先にあるのは精神の満足、精神的本能に従った仮想現実です。

 肉体的な行動を唾棄し、かなぐり捨て、精神性だけが伴われる<意識だけの世界>へと向かった……のであります。それを可能としたのが『ディーヴァ』と呼ばれる楽園であったのです。其処に存在していたのが本作の主人公、アンジェラ・バルザック。綺麗なだけでなく頭も切れる、そして己の信ずる正義にひどく忠実なキャラクターだったのです。

 ディーヴァでは人間の情報は機械的信号に変換されていますが、当然、人間の情報は01信号だけでは語り尽くせません。2400年に人類は、DNA情報を基盤とした機械的媒介へと変貌を遂げ、自らの存在価値を<情報>へと置き換え、電脳空間に存在していましたが……ただ、人間はあくまで人間であり、そこには機械的な存在(と一括りに出来るわけのない)紛うことなき<魂>があったのです。電脳空間とはいえ、魂だけで人間は存在し続けていたのです。

 此処までの内容で、僕はかの名作、ウォシャウスキー姉弟の『マトリックス』を思い出しました。恐らく、本作の根底的な設定として、『マトリックス』がひとつの下敷きとして存在するのは否定すべきではない事実であったと考えます。

ストーリーラインの感想(大きなネタバレあり、未見の方は注意

 主人公であるアンジェラ・バルザックは、地上に降り立った後、ディーヴァ機関の依頼を受けたディンゴ(ザリク・カジワラ)と邂逅を果たします。ディーヴァ的価値観の結晶ともいえるアンジェラを、ディンゴは少しずつ氷塊させてゆき、アンジェラ自身の生き方および信念すら変えてしまう。そこに起因する要因として、フロンティア・セッターの存在もあるのですが、この信念の移り変わりこそが重要で、この物語で語られるキー・センテンスへと繋がってゆくのです。本作の訴えたい内容は至極単純明快であり『人間の未来』『人類の夢』なのは理解に容易いことなのではないでしょうか。

 僕が好意的な印象を持ったのは、先の二つのセンテンスであり、人間は地球を離れたのであれば、以後どうしてゆけば良いのか? この広い宇宙には何があるのか? 未知数ながら追い求めるフロンティア・セッターの姿は、まさに人間らしくあり過ぎる人間の、完成型ともいえる存在なのではないかと感じました。

 此処で、重大なネタバレを挟みますので、未見の方には注意をして頂きたいのだけど、フロンティア・セッターは人間ではありません。人間が生み出した機械が独自進化を遂げて、人間臭くて人間らしい、独自の信念を持った存在となっている。北海道が開拓をされたのも、フロンティア精神を持った先人の力が非常に大きい。それと同様に、宇宙の果てを夢見るフロンティア・セッターも、未知を耕す先進的な開拓者だったのではないか。

 しかし、フロンティア・セッターは機械です。なのに機械らしくない存在であると描かれている。彼は、従来のSF映画にあるような<自我を抱いたAIが人間を滅ぼそうとする>なんてものとは、ほど遠いキャラクターであり、むしろ人間に新たな可能性を暗示してくれる、共存すら提案をしてくれる、端的にいえばメチャクチャ良い奴なのです。HAL9000とは違うね!

 フロンティア・セッターは、人間の居住地としての限界を迎えた地球を離れて、新たなる地平(別の惑星)を追い求めます。そのようにプログラムをされたのでしょうが、彼自身が自我と存在意義に目覚めた先にも、それが最も大きな人生目標・存在意義として据えられていたのであれば、何ともなく素晴らしいロマンを携えた、まさにフロンティア精神を持った、人類的にも貴重な本能に従っている類い希な逸材であります。

 この純真な思想に打ち絆されたアンジェラ・バルザックが、自己のこれまでの価値観を改変する仮定こそが、『人間が人間として、新たなる未来を求める』という本来の人間文化の意義を達しようとする道標になったのではないでしょうか。

 本作の終盤では、ディーヴァ機関の意向に従わないアンジェラ・バルザックとディーヴァの選りすぐりアーハン部隊との戦闘も描かれますが、その一戦においても、アンジェラ・バルザックを突き動かすのは<フロンティア・セッターの求める未来=人間の未来>だったのではないかと思われます。

 この最終決戦に関しては、大変演出が楽しいもので、ロボット対ロボットの目眩く地上戦&空中戦。ロボマニアには堪らない展開が用意されております。

 ここで、ふと思い出したのが2013年に公開となった『SHORT PEACE』の『武器よさらば』です。あの市街戦のようなゴージャスな戦闘シーンであった……。林原めぐみのちょい役加減も凄かった……。まさに、アニメ的エンタテインメントの到達点のひとつとなったのではないかと感じる。なにしろ、ディンゴが生身の癖に、凄いんだもん。さすがのヒーロー補正! まあ、どう凄いのかは本作で体験して下さい。

絶賛公開中の今こそ観るべき!

 虚淵玄が脚本をしていて、更に『機動戦士ガンダム00』の水島精二が監督をしている。「これが、エンタテインメントの王道だ!」と訴えかけているような本作は劇場鑑賞が基本です。今すぐ劇場へ行こう。

 

 最後に、本作のタイトルである『楽園追放-Expelled from Paradise-』は、観る者によって意味合いが変わるのではないかと感じる。是非、自分なりの解釈を検討して欲しい。

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