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没個性テーマパーク:EXTRA

Wait a minute, wait a minute. You ain't heard nothin' yet!

タクシーの運転手は何故、天気の話が好きなのか

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布団が暖かい

 私は非常に寝起きが悪くて、出来るだけ布団の中から出たくないタイプなのです。布団の中は暖かく、冬の寒さだって太刀打ち出来ません。勤務開始時間まで一時間を切っても、布団から実際に出ないのは、非常に大きな問題であるとも言えますが、自分の欲望に正直に「まだ、あと1分寝れる」「あぁ~ん、あと30秒寝れる」と、小刻みに小刻みに、浅い睡眠と緩やかな覚醒を繰り返していると、本当に本気で遅刻寸前になり、運が良くないと出勤時刻に間に合わないのでは!? という状況に、月の3分の1くらいの頻度で陥ります。

 ダメ人間かも知れませんが、布団が暖かいから仕方がありません。暖かさは罪だ!

 ですが、現実は待ったなしです。私が布団の中で、ぼやける夢の中で、何度顔を洗って歯を磨いて家を出ても、目が覚めたら布団の中で驚愕します。「ええぇっ! 俺ってば、まだ出勤してなかったの!?」とワケも分からず衝撃を受けるばかりですが、真面目な話、起きなければいけないギリギリの少ない瞬間から瞬間で繰り広げられる夢の内容って、何度も家を出発するまでのモノローグを輪廻転生ばりに繰り返すアレなんですよね。皆さんにはそんな経験ないでしょうか?

 そして、結局はギリギリよりもマジでギリギリギリと歯軋り並のギリギリギリギリに突入し、1分1秒の動作を効率的にしなければならなくなります。スーツを着る時に、ネクタイの長さが気になるのですが、明らかに長さをミスってしまったりするのですが、それを直す時間だってないのです!

 そうなってしまうと、必然的に最寄りの駅までタクシーを利用することになります。そうです。今日の話題は布団じゃなかった。ネクタイでもなかった。タクシーだった。ということで、冬の寒空の下、私はタクシーを追い求めることとなります。

タクシーが捕まらない

 私の家は微妙に住宅街の中ですので、なかなかタクシーが捕まらないことがあります。特に、土・日・祝に関してはタクシー運転手も休みが多いのかどうか知りませんが、タクシーがなかなかいないのです。

「やれやれ、僕は絶望した」

 出来るだけ、目的地の駅へ近付けるように小走り至極でシュラシュシュシュと軽やかな足取りで進んで7分程、藻掻き倦ねいてタクシーをゲットしたとしても、そこでまだ安心するわけにはいきません。タクシーの運転手との会話が待っております。

 私はなかなかにして、これが苦手なのです。いや、得意な人がそんなに多いとも思いませんけどね!

タクシーで繰り広げられる、素朴で平和な心理戦

 タクシーの運転手は大抵、オジサマが多いです。運転が苦手な私からすると、タクシードライバーは運転のプロフェッショナル! 尊敬すべき存在です。さぁさ、急いで目的地に向かっておくれ……と、当然思うのですが、その短くはない目的地までの緩慢な時間の中で、運転手はこちらに言葉を掛けて来ます。その最初の一言に、私はいつもドギマギとしてしまいます。まどマギじゃなく、ドギマギです。

 さて、大抵の場合ですが、タクシー運転手は『天気の話』を話題にします。ここで空恐ろしい気持ちになるのは、天気の話は別に天気が悪い時だけでなく、カラッカラの良い天気の時だって出来るってことです。以下に記します。

 

☆天気が良い時編

 運転手「いやー、今日は天気が良いですねぇ」

 私「そうですねぇ」

 運転手「最近、天気悪かったのに、随分と晴れましたねぇ」

 私「そうですねぇ」

 運転手「ただ、今日は午後から天気が悪くなるそうですよ。雨に当たらないといいですねぇ」

 私「そうなんですねぇ」

 運転手「そういえば、この間、凄い雨が降った時に、スリップして大変だったんですよぉ」

 私「そうなんですねぇ」

 運転手「今は天気が良いから、そんな心配もなさそうですねぇ。ただ、午後からはどうなるか分からないですよね」

 私「そうですよねぇ」

 

☆天気が悪い時編

 運転手「いやー、土砂降りですねぇ。参りましたねぇ」

 私「そうですねぇ」

 運転手「ただ、タクシードライバーは、こうやって天気が悪い時は稼ぎ時ですからね。お客さんには悪いけど、有り難い側面もあるわけでね」

 私「そうですよねぇ」

 運転手「やっぱり、こんなに降ってるのは台風が近付いて来ているからかな? 今日の天気予報で言ってましたよ」

 私「そうみたいですねぇ」

 運転手「ただ、やっぱりお客さんの立場になるとね、天気が良い方がいいよね」

 私「そうですねぇ」

 

☆天気が微妙な時編

 運転手「なーんか、曇ってきましたねぇ」

 私「そうですねぇ」

 運転手「今にも、雨が降り出しそうな雲だねぇ。太陽も見えないし」

 私「そうですねぇ」

 運転手「まあ、でも晴れるかも知れないし、さっき聞いた天気予報では降水確率は低かったからなー」

 私「そうなんですねぇ」

 運転手「気温が下がって来たから、雪なんか降らなきゃいいんだけど」

 私「そうですよねぇ」

 

 まあ、ここまでに書いた通りですね、とにかくどうでも良い話というか、なんか聞いていると「会話じゃなくて、天気に対する感想じゃん!」って気もしてくるけど、どうしてタクシーの運転手はこんなに天気の話を一方的にして来るんでしょうかね?

 そりゃ、短い時間の中であっても無言を貫いているよりは、多少は気持ちの面で違うかも知れないし、もしかしたらタクシーに乗った客が、天気の話を求めているかも知れないし、色々な理由に関連付けられる可能性はあるけども、それでもやたらめったらに天気の話をするドライバーが多過ぎる!

 この、天気の話って、非常に単純な話に置き換えるのも容易なので、本当に飽きやすくて退屈な印象しか残らないんですよね。

 

☆リンゴが赤い編

 運転手「いやー、随分と赤いリンゴですねぇ」

 私「そうですねぇ」

 運転手「かなり熟してるみたいだし、甘い味がするかも知れませんね」

 私「そうですねぇ」

 運転手「このまま放っておいたら、数日も経てば腐っちゃうかも知れないよね」

 私「そうですねぇ」

 運転手「リンゴも最初は緑色だったわけじゃないですか? それがこんなに赤くなるなんて、自然は不思議だよねぇ」

 私「そうですよねぇ」

 

☆トイレが臭い編

 運転手「この公衆便所、ちょっと臭過ぎる気がするねぇ」

 私「そうですねぇ」

 運転手「ちゃんと掃除とかしてるのかな……こういう所が綺麗だと、気持ちも良いものなんだけどねぇ」

 私「そうですよねぇ」

 運転手「あ! ここ和式だ! 洋式の方が良いよねぇ」

 私「そうですねぇ」

 運転手「うーん、誰かが入ってるな。別のトイレを探した方が良いね」

 私「そりゃそうだろ」

 

 何となく、天気の話って、こういった<目の前の当たり前のことを当たり前に語る>だけの印象に近くて、山に登った時に「景色が綺麗だなぁああ!」って言ったら、そりゃ相槌を打って「そうですよねぇえ!」と言う他ないし、ただ、そんな当たり前なことをわざわざ言う必要あるのか!? ってことで、非常に建設的でない会話なような気がしてなりません。

タクシー運転手は天気の話をどう思っているのか?

 ここで、Googleを使って色々と検索をしてみると、どうやらタクシー運転手にとって天気の話とは、別の話をするための取っ掛かりの部分に過ぎないらしい。

 えー……、なんか天気の話だけされて、別の話をした覚えがないけど。それは私があまりに退屈そうにしていたから、運転手が気を遣ったのだろうか? まぁ、それは良いとしても、ぶっちゃけ天気の話をされても、ちゃんとスマートフォンなんかの設定をしてたら、すぐに現在地のお天気情報なんて把握出来るし、わざわざ憶測で「雨が降りそうだね」なんて言われても困るわけです。返答として「いや、この後の予報だと、降らないっぽいですよ」なんて言うわけにもいかないし、それでメーターをひとつ上げられるのも嫌だし、なかなかにして気を遣う時間であります。

 ただ、タクシー運転手は、天気の話から裾野を広げて、スポーツの話や政治の話や趣味の話や前職の話などを織り交ぜて、お客を退屈にさせないということが大切だと認識されているようです。

 だったら、もう少しぶっ飛んだトークをして貰いたいとも思う。

「好きなアニメとかあります?」なんて急に聞かれたら、タクシー運転手のプロフィールカードを見てみて「アニメって書いてある……」と思ったら、「マインド・ゲームとか、好きですね!」と言って盛り上がりたい。「攻殻機動隊とか観ます?」って言われてバトーの魅力を語り合いたい。最初に天気の話を取っ掛かりとしたら、絶対にこの境地には達しないだろうし、だったら、タクシーごとに『あなたが興味ある会話ボタン』を設置して、そのボタンに<アニメの話><映画の話><本当にあった怖い話>とか選択肢を用意して、顧客に選ばせた方が、満足を抱かせるサービスになるんじゃないだろうか? もしかしたら、そのタクシーのファンになるかも知れないのにね。

 先述もした通り、メーター上げられるかも知れない恐怖ってのは私の中に根付いていて「天気の話で愛想良くしてないと、タクシーの運転手も機嫌を損ねて、降りる時に120円くらい急に上がったらやだなぁ」と、何となく気を遣ってしまいがちなので、もしかしたら、こうしたタクシー内での心理戦に打ち勝つためには、自分から先に話を振ってしまうのもありかも知れません。

 

 私「マトリックスとか、めっちゃ好きなんですけど。なんか好きなSF映画とかありますか?」

 運転手「2001年宇宙の旅かな」

 私「あれ、良く分からなかったんですよ」

 運転手「じゃあ、ガタカとかなら面白いかも」

 私「あ、それ好きです!」

 

 こんなのが良いのかも。

身も蓋もない結論を言うと

 こんなことを言うと、ここまでの全ての文章が無に帰してしまうのだけど、最強のタクシーはMKタクシーだと思うんですよね。タクシー業界ではメチャクチャ評判悪いし、裁判ばっかりしてるけど、会社の方針か何かで顧客に関して無駄話を一切しない、というのがあるわけですよ。天気の話なんて絶対にしない。これが、ある意味では「潔いなぁ」と感心するところであります。

 タクシーって乗り物は、結局は『顧客を目的地に、無事に送り届ける』が求められる最重要の要素であって、それ以上でも以下でもないとしたら、別に小粋な会話って必要ないのかも知れませんね。

 ああ、なんて身も蓋もない!!

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