没個性テーマパーク:EXTRA

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男らしさって、なんだったかね

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ロックじゃねぇ! と近い

 BARで酒を飲んでいると色々な人と知り合いになります。

 たとえ一見さんだとしても、隣に座ったら多少の縁です。会話を交わすこととなります。お互いの身辺状況や「仕事、何してるの?」や、「彼女いるの?」や、兎にも角にも会話を介した上での『交友関係』が生まれます。

 私が通っているBARでは、そうして繋がりが出来て、友人が増えるわけですが、先日知り合った人は非常に『男』を意識している人であった。

 まず、口調が男らしい。いわゆる、べらんめぇ口調なのだ。

「お前よぉ、これについてはどう思うんだ!?」とか「最近よぉ、くだらねぇ奴が多くねぇか!?」とか。まあ本当に素晴らしいくらいに無鉄砲な喋り方なわけですよ。

 そんで、気が付いた時には、BAR恒例(私の行くとこだけかも知れないが)の酒を掛けたゲームが始まる。不健全かも知れないが、負けたらテキーラやジンを一気飲みとか、そうした類のものだ(居酒屋では一気飲みは禁止されている)。これがなかなかにして、暑苦しい『男』がいるとヒートアップする。確か、その時に興じたのは『黒ひげ危機一髪』だったな。

男は飲まなきゃ男じゃねぇ!

 私は20代前半の頃はゲーム大好きだったわけですよ。別にこれについては男らしさとか関係なしに、<負けたら一気飲み>という生と死を賭けたデスゲームのヒリヒリとした緊張感に魅せられていたためです。

 そのゲームってのが『オセロ』だったり、『ブラックジャック』だったりファミコンの『爆笑!!人生劇場』だったりするわけです。ルールは多種多様に目眩くのですが、何かしら<負け>とされる要因がある時は、グィッと一杯飲まなきゃならない。自分が飲むのは嫌ですが、人が飲んでいるのを見るのは楽しい。酷い嗜虐性に感じるかも知れませんし、本来は他者に無理強いして酒を飲ませるなんて正しくない行いではありますが、自分が負ける可能性も考慮した上でプレイする遊戯には、勝利した時の底知れない爽快感ってやつがあります。いやぁ、不健康極まりないですね!

黒ひげ危機一髪の話に戻る

 余計な蛇足が入りましたが、その男らしい人と興じたのは『黒ひげ危機一髪』でした。私は最近、酒の飲み方には気を付けており、前後不覚になるような飲み方は避けております。だって、翌日が辛いですもの。ゲボゲボしちゃったら、自然に胃液を還元して、世の中に優しくなってしまいますもの。翌日、仕事が休みだったとしても、負けまくって飲みまくった次の日は、一日が潰れてしまいます。それって、勿体ないですよね? ようは、そう考えていて「『黒ひげ危機一髪』をやるよ!」ってなった時も「私は遠慮しときますよ……」と言ったのだけど、その男らしい人が「お前、男じゃねぇのか!?」って言ってきたわけです。

 えーと、男らしさって何だろう? と、唐突に疑問に思ったわけですよ。その時にね。「男らしいって、無謀な賭け事に臨むことなのか?」と考えてみたんだけど、答えは出ない。次いで考えたのは「戦うのが男なのだろうか?」だったが、酒を飲む上での戦いって、あまりにも不健全な気もする。

 だが、私も生物学的には性別:男性なので「お前、男じゃないのか!?」なんて聞かれた日には「いや、男ですよ」と答えを返さざるを得ない。『黒ひげ危機一髪』ごときで、後退するわけにはいかないし、戦略的撤退を取るわけにもいかん。

 この「お前、男じゃないのか!?」という言葉は、なかなかにして煽り文句の優秀賞です。生物学的に男をやってると「お前、男じゃないのか!?」って言われて、「黒ひげはちょっと……」なんて言うわけにもいかず、戦うことを厭わず、結局は遊戯に興じてしまう。酒を強要されるのと一緒ではあるが、戦わないで逃げるのは<格好悪い>、結局、私は『黒ひげ危機一髪』に挑戦してしまうわけだった。悲しい男のサガである。

 その時に考えていたのは、如何にして負けないかということ。

『黒ひげ危機一髪』は確率と運のゲームであるから、決して負けない方法ってのは存在しないと思うのだけど、それでも<出来るだけ負けない方策>を考えなくてはならない。だって、無理にお酒飲みたくないし、ましてや負けたくないし、勝負には勝利して相手を凹ませたい。そんなモチベーションが生まれてくる所が、どうにも男としての弱みなのではないかと思う。中二秒に近いものがありますね!

戦いは開始される

 先にも書いた通りだが、私は勝負に負けたくない。

 酒を無理に飲みたくない。

 個人的な嗜好であるが、特にジンは飲みたくない。苦くて美味しくないからだ。異論は認める。

 ゲームは始まり『黒ひげ危機一髪』の樽にそっと剣を差し込む。「飛び出ないでくれ、飛び出ないでくれ」とアワアワしながら、ドキドキしながらぶっ刺してやるわけですが、その日のゲームでは私はある程度負けなかった。負けたくないという気持ちが優先したのか、15回くらい繰り返された遊戯の中で、4度くらいの敗北で済んだ。それでも、ジンは辛かったし、実際、体内から世界に水分を還元しそうになったが、何とか持ちこたえられるくらいだった。男らしかった人は10回以上負けを喫し、飲み続けてテンションもおかしくなっていたのだけど「美味い! 美味い!」を繰り返していたし「OK! 余裕!」と言い続けていた。こうした振る舞いも、彼が言う男らしさの一端だったに違いない。

 だが、結局は泥酔コースに突入してしまっていた。もう、日本語が不自由な感じになっていたし「男はにゃ! こんなことにゃ負けてられないのにゃ!」と負けたのに連呼していた。不思議だなーっと私は思った。負けてるのだから、それは事実があるだけで、男らしさとは無縁なんだけど、彼にとってはそうではなかったようだ。

男らしさは虚栄とハッタリではないか

 実際の話、僕は相対的に見ればゲームには勝利したし、その人は負けているのだけど、彼が言う通りの<男らしさ>というものを、彼自身は維持していたようにも思える。

 男は多少の酒では酔わない、とか、男はゲームに負けても勝負には勝っている! とか、もう何というか相当に酔っているのにイキイキとしていて、それはそれで凄いと正直に思った。私も4杯程度だがアルコール度数40度を300mlくらい飲んでいて「もう勘弁」と思っていたのに、彼は「男はこんなもんじゃない! まだいける! まだ飲める!」なんて宣っていましたが、さすがに止めておきました。もう無茶でしょう! って言ってあげたら大人しくなった。そうした出来事を経て「男らしさって虚栄だよな」と改めて思ったのでした。

 世の中には様々な<男らしさ>が存在しますけど、それって別にゲームで消費されるものではないですよね。男としての度胸の良さや、戦いに赴く精神性ってのは、もっと別の場所で活かされるべきで、決してBARで賭け事に興じて用いられるものじゃないし、それを他者に強要してはいけない。結局は「酒飲め!」に繋がるだけなのだから、そうであってはいけないと思う。

 本来的な男らしさって、『頼りになる』という、それに尽きるのではないでしょうか? この人といれば<間違いがない>という判断に繋がる要素こそが大切で、決して一過性のものであってはならないはずだ。

 私は男らしい人間ではないけども、他者に酒を強要するような<男らしさ>は必要でないと考えているし、誰かから評価された上での<男らしさ>を身に付けたい。その方が人としてのステータスになるのではないかな? と結論付けることとなる、有意義な出来事ではあったな、と思います。

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