没個性テーマパーク:EXTRA

Wait a minute, wait a minute. You ain't heard nothin' yet!

ファミマガとエスタークとエヌオー

 小学生くらいの時はドラゴンクエスト派とファイナルファンタジー派がいて、それはそのままエニックスとスクウェアの対立を表していたが、きのこの山とたけのこの里の間で巻き起こっている戦争とは異なっており、不可侵領域をお互いが意識しながらパフォーマンスとしてそれぞれの役割を演じていたようにも思える。実際、クロノ・トリガーが発売された時に、2社が協力をして開発を行ったわけだが、その出来事は双方のゲーム会社の懐の深さを感じたし、エニックスもスクウェアも本気で面白いゲームを作ろうとした時は手を組むんだな……なんて感慨深いものがあった。だが、気が付けば長年のライバル同士は合併をしていて、気が付けば僕はコンシューマーゲームをしなくなっていた。2015年には新羅も発足するらしいし、世の中は大変なことになっているようだ。

 さて、先に紹介したゲームソフトで最も熱心に楽しんだそれぞれのナンバリングは『5』だった。ドラゴンクエストも5、ファイナルファンタジーも5。『6』も勿論プレイしたが、鮮明に記憶に残っているのは5である。

 僕は経験値を積み立てるだけのゲームが大好きで、いわゆるテクニックがないものだから、レベルを上げさえすれば何となく進めるこれらのシステムは性に合っていたのだろう。ドラゴンクエスト5はモンスターも仲間になるし夢があった。ファイナルファンタジー5はジョブシステムが秀逸だった(まあ、3にもあったんだけど)。

 そういったわけで、長時間プレイを重ね続けて行き着いた先は、ラスボスを簡単に倒せる境地だった。ミルドラースもただの肥満体の赤みが差した気の良いおじさんになってしまったし、ネオエクスデスは『ぜになげ』さえしていれば立ち退いてくれるちょっとグロテスクな彫刻の集合体に過ぎなかった。当時、これらのソフトウェアにはとある噂があり、難易度の高い条件をクリアすると嬉しいご褒美が得られる――というものだった。

 曰く、ドラゴンクエスト5は「エスタークを10ターン以内に倒すと仲間になるらしい」

 曰く、ファイナルファンタジー5は「ギルガメとオメガとしんりゅうを倒した後に手に入るもんしょうを持って第三世界のモアイ像を調べるとエヌオーが復活し、戦える。その戦いに勝利すると、幻のジョブであるパラディンが貰えるらしい」

 などというものだ。これは当時、小学生の間で非常に有名なものであったが、何も根拠がないおばけのデタラメではなく、ある程度のソースが存在していたことを覚えている。

 昔、ファミマガという雑誌があった。略さずにいうとファミリーコンピューターMagazine。徳間書店インターメディアが発行しており、様々なゲームの情報が記載されていたが、ファミコン通信(当時、現ファミ通)と比べても、もう少し手作り感が溢れていた(褒め言葉)というか、泥臭かった(褒め言葉)というか、馬鹿らしかった(褒め言葉)というか、僕らにとってロマンを感じさせる脱帽のネタの宝庫だった。そのファミマガの別冊――銀色の小さな冊子に先述した、ふたつの噂が書いてあったのだ……確か、そうだったような。

 全国に配本されているファミマガに載っているのだから、それなりの信憑性があるに違いない。と、僕は思っていた。少なくとも、口裂け女やテケテケよりは、キツネ目の男くらいには存在を担保する証左となっていたはずだ。

 結局、その頃のゲームキッズ達は、僕も含めゲームの中を虱潰しに探索し、冒険し、渡り歩いた。しかし、膨大な時間とそれなりの電気代を使って得たものは、呆れるほどの徒労感だけだった。

 僕は本気でエスタークが仲間になると思って3体のゴーレムをレベル99まで育成したし、パラディンを手に入れるため全てのジョブをマスターしながら亀と機械と大きなトカゲをやっつけたのに……噂は全部ウソだったんだぜ。

 ここでファミマガの話に追加をする。

 ファミマガは毎号、紙面に裏技コーナー(ウルトラテクニックからウルテクと呼称されていた)があったのだが、その裏技の中に必ず1つだけ実際には動作しない裏技が掲載されていた。『ウソテックイズ』というその企画は正直かなり好きでもあったのだが、自分が持っているゲームソフトが対象となった時はなかなか苦々しい気持ちにもなったものだ。

 具体的にいえば『すごいへべれけ』で、みんながぞうさんの鼻を付けて愛くるしい格好になるという裏技が掲載されていた(しかも、ご丁寧に、具体的な画像入りなのだ)のに、実際は動作しない。タイトル画面で上上下下LRLRBAくらいのコマンドを入れさせられたのにぞうさんの鼻を付けない。コマンドが間違っているのか? と、半泣きになりながらぞうさんコマンドを繰り返しても、事象は発生しなかった。ピンクの象が見えるわけでもなく、本気で正式に抗議してやろうかとも思った。自宅の電話で。

 エスタークとエヌオーの話も、これらを拡大したひとつのイベントだったのだろう。

 ただ、大人になって気が付くのだが、純粋にゲームを楽しんでいたその頃は、ゲームに掛ける熱い情熱があったし、愛情があった。馬鹿らしくとも、エスタークを仲間にしようとしていた気持ちは本物だったし、エヌオーを倒したかった気持ちにも嘘はなかった。嘘の噂であったと気が付いた時の悔しさも本物だったし、僕はひとり甲子園で敗退した。

 先日話題になった『ファイナルファンタジー2のアルテマは何故弱かったのか?』の記事にも書いてあった言葉が身に染みる。

「苦労した挙句に役に立たないものが手に入ることは人生でよくある」これ、名言ですよね。まあ、今回の話しで言うと「苦労した挙句に何も手に入らないなんてことは人生でよくある」ですが。何事も慎重に見定め手を付けなければならない、という点では、良い意味で教訓になったのは確かのようです。

 そしてこのネタを愉快だと感じたスクウェア・エニックスが、リメイク版で本当にこれらの要素を実装してしまうとは、当時の絶望感に苛まれた僕は知る由もなかったのです。

© 2014-2017 kikinight All Rights Reserved.