没個性テーマパーク:EXTRA

Wait a minute, wait a minute. You ain't heard nothin' yet!

昨年末に酔っぱらいに絡まれた話

 友達がいないので、新年を迎える時は馴染みの飲食店に向かう。週に3回程度は顔を出すので、すっかり常連で、顔見知りの人がいる時は会話をするし、知らない人がいても隣に座れば会話をするかも知れない。

 年越しそばを啜りながら、新たな年を迎える瞬間にはジャンプをして「俺はあの瞬間地球上にはいなかった!」というお決まりの『新年ジャンプ(週刊少年ジャンプの増刊ではない)』をしようかどうかを悩んでいる時に、その酔っぱらいは来店した。

 ある程度は酔っていたが、会話は出来る程度だった。おそらく、なんらかの危険を察知した店主は僕の隣にその人を座らせた(他には女性客しかいなかったからね)のだが、その予想は大方当たっていた。

 おじさん(年の頃は60代だろうか)は、隣に座るなり僕に声を掛けてきた。

「俺は友達がいないから、年明けを迎えるときは、こうして飲み歩くんだ」

「ああ、僕もですよ。ひとりで年を越えるのは寂しいですからね」

 そうこう会話を続ける内に、おじさんは家族の話を始めた。

「俺には息子が2人いてね、もう成人しているんだが、立派に働いている」

「そうなんですか」

 家族がいるのであれば、一緒に年を越せば良かったのではないかと思ったりしながら、相手が仕事の話をしていたので「息子さんはどんな仕事をしているのですか?」と尋ねた。

 すると「お前にそんなこと関係あるか!」と、それまで和やかに談笑していたにも関わらず、急に激怒を始めたおじさんは焼酎を一口含んだ後に「そもそも、仕事がそんなに大事か! 何様だ貴様!」なんて続ける。

 人と話をしている時は一歩先、二歩先を考えながら、地雷原を厳かに注意深く進んでいくものだが、どうやら僕は地雷を踏んで吹き飛んだらしい。GAME OVERとはなんと唐突なものなのか。『超浮遊要塞エグゼドエグゼス』をプレイしていて敵弾が処理落ちで見えなくなり自機が爆発炎上をした時と同じものを感じる。仕様だからといっても、あんまりじゃないか。

「なにか、気に障りましたか?」

 仕様ならば仕方がなく、僕は驚くよりも相手を宥めることを考えていた。しかし、落ち着いて考えてみれば「なにか、気に障りましたか?」なんて言葉は、油にガソリンを注いでニトロメタンをぶちまけて火を点ける行為に近かった。そりゃ燃焼する。

「家族のことを他人に干渉されるのは気に食わん!」ということで、怒りは収まらず、むしろ更にヒートアップしているようだった。

 僕は自分が悪かったと思わなければ謝らないので、その時も当然、謝罪はしなかったのだが、どうすりゃいいかな? と次の言葉を検討していた。

 その時、こちらの様子に気が付いたか店主が「お客さん、他の人に迷惑掛けるなら出てってくれないか」と、昔気質な台詞を告げてくれた。

「客が何の話しようが勝手だろう! 金払ってんだぞ!」と、おじさんは応戦するが、後払いなのでまだ金は払ってない。結局、強面の店主と二三のやり取りをした後、おじさんは酒を残したまま退店した。

 店主からは「ああなりそうだから、隣に座ってもらったんだよね」といわれたが、まあ僕の役回りとしてはそんなところだから、別段気にもしていない。ただ、この時に学んだこととして、話の流れや文脈を理解しながら会話をしているつもりであっても、相手を激怒させてしまう可能性があるということだ。これはそれなりに意外な出来事だったが、それからは人と話す時は、もっと注意深くなった。

 そして、新年ジャンプを忘れていた僕は少し残念な気持ちになったのだった。

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